AIで楽曲を楽器やボーカルに分離する



情事の後の阿部くんは、冷たい。

ペニスを阿部の下半身から抜きとると、起き上がるのも億劫で双眸を瞬かせ天井のシミをじっと見つめた。
そうやって、ぼんやりする事数十秒。
むくりと気だるげに起き上がった阿部が、此方に背を向け散らばった制服をかき集め黙々と服を着始める。
いつもの光景だ。
特におかしい事なんて何もないのに。
何故だか今日に限って、阿部のその素っ気ない素振りが無性に辛く寂しかった。

「…あべくん、」

「なに。」

もうちょっとだけ一緒に居たい。

そう続けるハズだった言葉は、阿部の淡々とした声音にさえぎられてしまった。
向けられた視線が痛かった。

「な…んでもない、よ…」
「…ー意味わかんねぇ。言い掛けて止めんな」

「ごめ…」

「…オレ、先行くから。お前も早く戻んねーと授業はじまるぜ。」

じゃあ、部活でな。

バタンと扉の閉まる重い音が室内を響かせると、三橋は小さく息を吐きだした。
西浦にきて投手をやれているのは彼の指示のお陰だと阿部には常日頃感謝していた。
だからこそ彼に嫌われることはしたくないと、サインに首を振ることもせず始終彼の顔色ばかりを伺っていた。
阿部が笑うと嬉しくて阿部が怒ると悲しい。
阿部はどういうものがスキでどういうものがキライなのか。
シニア時代、榛名とはどういう会話をしてどういう練習をしていたのか。
阿部に触れたい、キスしたい、
入れてぐちゃぐちゃにかきみだして、犯してやりたい。
彼に対する欲望は、治まる所か日に日に歪な形へと変わっていった。
例えるなら病気。
早期のうちに発見すれば治せるものも、時間を掛け、あちこちにそれが転移してしまえば手遅れになるのだ。
「最初の内で気付けてたら…こんなに、苦しくなかったかな…」
阿部への想いを封印していたら。
阿部に告白していなければ。
阿部と…出逢っていなければ。

考えたところで今更どうにもできない。


阿部に告白したのは1ヶ月前。
OKの返事をもらった時は飛び上がる程嬉しかった。
…なのに。
いつからこうなってしまったのだろう。
付き合っているはずなのに、彼の全てを手に入れたハズなのに。
何故だか虚しい。
彼は体を開くことは文句すら言わず自ら進んでしてくれたが、心の中には踏み込ませる余地すら与えてくれなかった。

「これじゃ、体の付き合い…だよ、阿部くん…」

ぽそりと呟くが、その問いに返事を返せる唯一の人物は既に教室に戻っている事だろう。
小さく溜息を吐き出すと、くしゃくしゃに丸められたシャツとズボンを拾い集め、其れを身に纏った。







 *********




「みはし、」

柔らかい掌が肩に触れる。

「…っ。…あ、た、じまくん…」

「具合わりーの?…さっきからぼーっとしてる。」

青白い顔をして首を傾げる田島に、そっちのほうが具合悪そうじゃないかと口を開こうとするも
田島の後ろを歩く阿部と、…そして阿部の腕に白く細い腕を絡ませた篠岡に視線をとられて、それは叶わなかった。


ただ呆然と二人の後ろ姿を見詰めていると、其れに気付いた田島が三橋の目線を追って
阿部と篠岡の姿を同じ様に呆然といった表情で捉えた。

「……な、んだよ、あれ」

声を震わせた田島に、ハッとして目線を戻すと眉間を寄せ痛みでも堪えるかの様にくしゃりと表情を歪めた田島が
目に入った。

「っおまえら、付き合ってんじゃねーの?」

「!…なんで…、それ」

「おー田島に三橋、モモカンが道具片したらベンチ集合だってさー…って、何みてんの?」
言葉半ばに、田島と三橋の間を割って入ってきた水谷。
そんな水谷に返事も返さず、ある一点をじっと見詰めたままの田島。
そんな彼に気付いた水谷もまた田島の視線を追って阿部ど篠岡に視線を移した。

「…あー、阿部としのーかかぁ。あの二人、付き合ってるんだよね」

「…え」

「…どーいうこと?」
田島が言葉を発したと粗同時に三橋も声を漏らした。
二人の声がピッタリと重なる。
そんな二人に水谷が、お前らほんと相性いいよね。ところころと笑ったが、…今のオレはそれどころじゃなかった。
頭を鈍器で殴られた様に痛い。
゛あの二人、付き合ってるんだよね゛
何度も繰り返しリプレイしてみるが、水谷が言った言葉の意味は阿部に寄り添い嬉しそうに笑う篠岡が
肯定していた。


「一昨日だったかなぁ、しのーかがオレにさ好きな奴いるんだって相談もちかけてきてさ…」

思考がぐちゃぐちゃで上手く纏まらなかったが、水谷の言っている要点だけは分かった。
篠岡は前から阿部のことが好きだったらしく、それを水谷に相談。
彼が間に入って二人の仲をとりもった。

オレ、キューピットなんだよ〜。と寄り添う二人をまるで自分のことのように嬉しそうに見詰める水谷。

「…っいみ、わかんねーよ!阿部付き合うのOKしたのかよっ?だってアイツ三橋と」
「やめて!!」

「…いい、から、田島くん…」


田島が凄い形相で、水谷の襟首を締め上げ揺さぶった。
水谷が顔色を青くし、助けを求めて此方へと視線を送ってくる。
田島の手首を掴み半ば叫ぶ様にそう懇願するとピタリと動きを止めた田島が、情けなくガタガタと震える三橋の手を
呆然といった表情で見つめた。
「…んで、…三橋は嫌じゃねーの?」

「…嫌だ、よ、」

「っじゃあ、なんで怒らねーんだよ!ここ、怒る所だろっ!」

「…え…ごめ……オレ何か怒らすような事した…?今一、話が掴めてないんだけどさ…」

「…怒る所とか…いわれても、わかんない、っよ…!」

「………っ。」

「…おーいっ、聞いてる?」

田島は、何故こんなに怒っているんだろう。
他人事なのに、まるで自分が傷付けられたかの様に憤怒して吠えている。
不意に先刻見た寄り添う阿部と篠岡を思い出した。
田島のいう通り、少なからず苛ついた。だが其れよりも悲しみのほうが大きかったのだ。
瞳を輝かせ楽しそうに笑う篠岡は、…とても可愛かった。
阿部とお似合いだった。
オレなんかより、ずっと。



奥歯を歯鳴りがする程強く噛み締めると、途端にじわりと涙が浮かんできた。
それを見られたら余計に惨めだと表情を伺えない様に頭を垂れ俯いた。

「…あ、阿部ー」

「…何、揉めてんの?」

ほっとした様子でへらへらと笑う水谷に肩を揺らすと思い切り顔を振り上げた。


阿部は、田島と水谷そして三橋へと視線を流すと僅かに眉間を寄せた。
それが何を意味しているのか、言葉足らずな阿部からは真意を測ることが出来なかった。

阿部の隣には、此処にいるのは当然といった表情で篠岡が立っている。
何もしらない水谷も憤怒し取り乱している田島も何も言わない阿部も、何もかも全てが不快で気持ち悪かった。


「田島くん、水谷くん、喧嘩はダメだよ!」

篠岡が焦った表情で田島と水谷の間に割り込んだ。


「…しのーかってさ…知ってたよな、阿部と三橋のこと」

打席に入った時いつも見せる真剣な面持ちで、田島が篠岡を睨む様に見詰めた。
そんな田島に、篠岡は僅かに眉間を動かし反応しただけで、すぐに何が言いたいのか分からないと言いた気に首を傾げ微笑んだ。

「私が、阿部くんと三橋くんの何を知ってるのか具体的に言ってくれないと分からないな」
この四人だけしか居ないのならいざ知れず水谷や他の野球部員もいるこの場所で、田島がまたも余計なことを言い出す事だけは避けたかった。
咎めようと焦って田島に視線を戻すが、それは三橋の杞憂で終わったようだった。

「…お前、マジさいてー。そんなやつとは思わなかった!」

「田島っ!お前、しのーかにそういう言い方…」

田島は悔しそうに歯噛みすると不機嫌な表情のまま、水谷の首元を解放し此方へと背を向けた。

「…田島くんが切れるのって、珍しいよね…水谷くん何かしたの?」

「うぇっ?オ、オレー?何もしてないよー…多分…」


「…あ、三橋くん!」

後方で呼び止める篠岡の声が聞こえてきたが、三橋は全速力で駆け出すと其れに反応も見せず無心で校門を飛び出していた。


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ブログにて投下中。ブログのほうがたぶん、更新はやいです。
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