シャーッ。 「…ょうっ…りょうっ!あんたいい加減にしないと本当に遅刻するよっ!!」 「んー…」 母親の怒鳴り声とカーテンを乱暴に開ける耳障りな音で私は目を覚ました。 …窓から差し込む陽の光が眩しい。 重たい身体を起こし、机に置かれた時計を見つめる。 12:22 「…っ、もう遅刻さぁ!何で、もっと早く起こしてくれんかったの!」 出勤時間の30分まえを指した針に飛び起きると慌ててクローゼットへと飛び込み、自分が悪いのを棚に上げ 母親に批難の言葉を投げつける。 「何回起こしたと思ってんの?車、乗ってるよ!」 「…うん!」 バタバタと騒がしい音をたて、昨夜準備しておいた服を着ながら洗面所へと走り 歯磨きと洗顔をほんの数分で終わらせ家を飛び出した。 「あんたがもう少し時間にゆとりもって行動してたら、こんなに焦らないでいいのに…」 助手席で化粧を始める私に、母親が小言をもらし始めるがそれは私の得意技「聞き流す」で見事にスルーされた。 出勤時間にはギリギリ間に合い、母親に礼を言って車を飛び出した。 「はよーございますっ!」 「おはよ」 「おはよー」 ショッキングピンクの看板をくぐり店内に入れば<スタッフ>と書かれたカードを下げた 見慣れた派手目の女の子たちに挨拶をして歩く。 私には、二つの顔がある。 昼間はギャル服ショップ店員、もう一つは ホステス嬢としての顔だった。 → ------------------------------------------ 戻る |