昼食を済まし、さあこれから寝るぞ。と意気込んで机に突っ伏したと粗同時。
「う、あ、う、」と双眸に涙を浮かべ声を震わせた三橋によって其れを中断させられた。
今度はなんだ、阿部か?花井か??
三橋を脅かさない様に小さな声でそう問えば、三橋は先ほどの出来事をあわあわキョトキョトと
まさに人間とは思えない動作で身振り手振り伝えようとしてくるが
…何が言いたいのか、…まったく伝わらない。
この時ばかりは、さすがの泉でも「オレはもー慣れたぜ。」とはいえなかった。
こういうときは、三橋専用翻訳機の出番だ。
視線をグルリと一周させて、ふと気がついた。
先ほどまで三橋と一緒にいたはずの田島がいない。

肩を竦めると、席のとなりで縮こまり嗚咽に震える三橋を見下ろして、オレは三橋に聞こえない様に
小さく溜息を零した。

「…もしかして、田島が原因?」

うっ、と息を詰まらせた三橋が顔色を青くした。

「あー、わかった。あいつが原因ね。…で何があったんだ?落ち着いてからで良いからユックリ
話せよ」


話を要約するとこういうことらしい。

阿部と練習メニューの内容についてメールでやり取りしているトコを田島が嫉妬。

「…んなの、部活はじまってから話すりゃいーじゃん。阿部って、ほんとこーゆうとこ細かいよなー」
「…田島くん、そういう言い方よくない、よっ」
「んだよ。」
「阿部くん、オレが無理しすぎない様に練習メニュー考えてきてくれてるんだよ」
「あべあべあべ、って。口開きゃ阿部しかいえねーのかよ!」

あとは、口論がはじまって喧嘩したってところだろうか。
二人とも、ああみえて中々の頑固者だ。自分が一度こうだと決めたことは中々曲げる事が無い。
だからこそ、度々反発しあうのだが。そうなった時、結局いつも、折れるのは田島の方だった。
‥にしても珍しいのは、田島だ。
彼の性格上、喧嘩は長続きしないし相当理に曲がったことをしない限り本気で切れることもない。
いくら仲良い友達だからといえども、嫉妬して喧嘩するなんて想像すらできなかった。

「オレ、田島くんに嫌われた………」

「嫌ってなんかねーって。」

「でも」

目下で揺れる茶色のふわっ毛をポンポンと撫でて宥めると、本日何度目になるか分からない溜息を
零して席を立ち上がった。
この状況を収集するには、まずはあの阿呆を蹴り飛ばして此処に連れて来るほかないだろう。

「今日のは田島が悪ぃんだから、三橋は気にすんな。」

「……泉くん、どこか、いく、の?」

「ん、トイレ。」
不安そうに見上げてくる三橋を落ち着かせるように、柔らかく笑うと
友人の為とはいえど、此処までしなきゃいけないもんなのか。とお人よしな自分の性分に毒吐いて
オレは教室を出たのだった。




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ひさびさにマトモなのかいた。
誰も死んでないって良い事だ\(^^)/