幻影。









 「え…」

渇いた喉に唾液を流し込み、汗ばんだ掌を硬く握り締める。
眉間を寄せ、白衣を身に纏ったその男を凝視すると
白衣の男は、眼球を細め能面のような表情<かお>で首を振った。
 「…誠に…言い難いのですが…余命、五ヶ月…半年もつか、もたないかでしょう。」












――肺にある腫瘍が、あちこちに転移しています。ここまで進んでいると
もう手のつけ様がありません…すぐに入院することをお勧めします。

頭が、空っぽだった。
何も考えられないほど思考はクリアになっているのに、足だけが前へと向かって進行していく。
まるで、自分が機械かなにかになった様だ。自分の意思で動こうと思っていなくても
誰かに操作されているように身体が勝手に動き続ける。

 「―い、…おい。」
 「……―え…。あ、……アーチャーか‥」

―――いつの間に、こんな所まできたんだろう。
気付けば、其処は自宅の前だった。
本人の意思とは裏腹に、自動<オート>で動いていた脚が、目前の男の前でピタリと止まる。
怪訝そうに眉間を寄せ、相手を値踏みするような視線で見つめてくる男<アーチャー>。
―――落ち着け。
何度も心の中で呟いて、気付かれないよう小さく息を吐く。
 「なんでもない、中に入ろう。」
自分で言っておきながら、何て白々しい言葉だろうと思った。
自宅の前に立つ同居人の気配にも気付かず、青褪めた顔色で俯いて歩いていれば
誰が見ても一目瞭然。何かあった…若しくは体調が悪いのかと気付くだろう。
 「……そうか。」
その言葉に納得はいっていない。だが、言わないのなら追求もしない。
怪訝そうな表情をしたアーチャーは、其処に立つ男に興味を失った様、ふい。
と目線を家の中へと移すと足早に男を追い越して中へと姿を消していった。
――パンッ
小気味の良い音がなる。
木で囀っていた小鳥たちが、その音に反応しバサバサと木々を飛び立つ。
「ごめん、アーチャー。…俺が、しっかりしないと…だよな。」
自身の両手で叩いた頬が、熱い。
二、三度大きく深呼吸をして気持ちを切り替える。
悪い顔色ながらも表情だけは、いつもの様に戻っているはずだ。

拳を硬く握り締め、アーチャーが消えていった屋敷の奥へと
脚を踏み出した。




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設定。
士朗→26歳あたりで(笑)。
アーチャー→32歳。
同棲しているという設定です。多分、好き同士。
同棲までの経緯はともかく(←まだ決めてないやつ)追々語っていくとして。
魔術やらサーヴァントやらの話は一切からんできません(多分)。
アーチャーはサーヴァントでもなく、ただの人です。
双剣を自由自在に出しちゃったりもしませんし、戦闘シーンも全くないです。
そして、士朗が白い(洒落かよ)。
うちの士朗タソは黒いのが売りなんですが、こちらの士郎タソはそれに比べて
かーなーり白いです。

EDはいつもの如くバッドEDで終わるでしょうが…orz

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